展覧会解説

2010年オルセー展 ポスト印象派 ショート・ショート解説


◇オルセー展は酷暑なので意外にチャンス!!

オルセー美術館が来年の3月まで改修中なので、二度と日本では見れないようなゴッホ、セザンヌ、ゴーギャンなどの傑作が六本木の国立新美術館に勢揃い!!

この夏は酷暑のせいで、暑い日はそこそこに美術館はすいています。特に夕方がお勧め!!これは名画を愛する我々にとってはチャンス!チャンス!

例えば7月23日のアイエム友の会でのフレンチを食べてのオルセー展解説では、思ったより美術館がすいていてご参加のみなさまと楽しく美術館をめぐれました。

今回の私のオルセー展解説は6回行われました。おかげさまでどれも大変盛況でありがとうございました。またキャンセル待ちの方々もでまして大変申し訳ありませんでした。

さらに7月2日のラジオ日本の“マット安川のスーパーフライデー”でもオルセー展の解説をしまして多くのリスナーの皆様から、FAXやお電話を頂きまして感動しました。ありがとうございました!!

☆☆まだオルセー展が終わるまでに2週間あります。そこで少し作品の解説を致します。みなさまぜひ何度でもオルセー展に足を運んで下さい!!

◇2010年オルセー展 展示会の隠されたテーマは日本美術の影響!

今回の展示会は印象派を乗り越え発展していった画家たちがテーマですが、展示会の隠れたテーマは日本美術の影響です。それはドガの踊り子の頭だけプッツンと切られた“裁ちきりの構図”に始まり、モネ、ゴッホ、ゴーギャン・・・・と続き、展示会の後半のナビ派に見られる平面的な装飾性はまさに浮世絵の影響です。

モネの“睡蓮の池”の途中で切られた太鼓橋にも裁ちきりの構図が見られますが、これによって画面が外に広がり、そこには自然と共生する日本の価値観が背後にあります。当時のフランスの画家たちは今の私達が忘れてしまったこういった日本の価値観も汲み取っていたのです!!

◇ショート・ショート名画解説 モネ“日傘の女、右向き”1886年

会場に入ってすぐ目に付くのがモネの“日傘の女”。下から見上げる構図の女性の背後には爽やかな空が広がり、光と大気いっぱいの印象派らしい作品。モデルはモネの二番目の妻アリスの娘、シュザンヌ・オシュデ。

ところでモネは11年前にも日傘の女を最初の妻、可憐なカミーユをモデルに描いている。(ワシントンナショナルギャラリーにある作品)今回のシュザンヌの“日傘の女”は最初のカミーユの“日傘の女”のポーズを繰り返している。

最初の“日傘の女”では最初の妻カミーユの顔ははっきり描かれている。しかし今回のシュザンヌの“日傘の女”では顔がはっきり描かれていない。それは今回の“日傘の女”は積みわらなどの連作と同じ発想で描かれていて、自然と一体になった風景に溶け込んだ人物だから。

しかしそれだけではなく、やはり最初の妻カミーユをモネは思い出していたので、モネは顔をはっきり描かなかったのだろうといわれている。日本の浮世絵にも構図を借りるくらい構図には熱心で熟慮するモネが、最初のカミーユの“日傘の女”と同じポーズ、同じ傘、同じ服で描いたということは、やはりモネがカミーユを思って描いたからに違いない。

実はこの日傘の女には、モネの二人の妻のドラマが隠されている。(詳しいことは拙著の「名画の秘めごと」をお読み下さい。)モネはちょうどフランスが経済不況となり印象派の絵が売れなくなってきた1876年にパトロンのオシュデ氏の夫人アリスと不倫に陥っていた。オシュデ氏が破産すると、貧乏暮らしのモネ一家にアリスと6人の子供たちが転がり込んでくる。そこでは病に倒れていたカミーユを愛人アリスが看病するという異常事態だった。カミーユは病にも精神的にも苦しみ、その1年後に32歳の若さで亡くなってしまう。ジヴェルニーに移ったモネとアリスはオシュデ氏の死後1892年に正式に結婚した。

この作品は、カミーユを苦しめて死なせてしまったモネのカミーユへの鎮魂歌なのです!!

◇ショート・ショート名画解説 ゴッホ“星降る夜(ローヌ河の星月夜)”1888年9月

この作品では夜空に輝く大きな北斗七星に注目!!本当はローヌ河の岸辺からアルルの町を見た時、北斗七星はアルルの町の上には見えないのですが、ゴッホはどうしても北斗七星を描きたかったようです。町の灯りと夜空の星のきらめきが融合した幻想的な風景です。前景右を歩く恋人たちは、愛と理解に飢える孤独なゴッホが求めたものの象徴です。

ところでゴッホは素晴らしい色彩画家ですが、絵を描く時はどうしても現実のモデルが必要でした。ゴーギャンのように想像で描けなかったのです。そこでこの作品も夜に現場で描かれました。ゴッホはどのようにして描いたのでしょう?

麦わら帽子に沢山のろうそくをさして、まるでうしの刻参りのような格好で描きました。通行人はさぞびっくりしたことでしょう!!

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