展覧会解説

「ルーヴル美術館展 愛を描く」国立新美術館2023年3月1日(月)~6月12日(月)

国立新美術館で、「ルーヴル美術館展 愛を描く」が3月より開催!ルーヴル美術館が誇るコレクションから、選び抜かれた愛の名画74点がやって来ます。その中の目玉作品をご紹介します。

17世紀オランダ絵画の黄金時代の画家ホーホストラーテンの”部屋履き“、ロココの最後を飾る巨匠フラゴナールの名作“かんぬき”、新古典主義の異端児ジェラールの甘美な“アモルとプシュケ”などをご紹介します。

ホーホストラーテン”部屋履き“1655-62油彩103×70

描かれた室内は、次々とドアと部屋が続く重層的空間で、奥の壁には2枚の絵画。様々な模様の床のタイルの斜線と光と影が繰り返され、さらに遠近法の錯覚を強調する。ここでは錯視的見事な空間表現がなされているが、見どころはそれだけではない。

誰もいない部屋に残された物たちが、主婦の不倫をほのめかす。部屋履きは脱ぎ捨てられ、箒も適当に壁に立てかけ、開かれたドアに鍵はさしっぱなし。これは主婦が家事を放って、愛人のもとに家を飛び出していったことを表している。

奥の壁にある画中画“父の訓戒”が、主婦の不倫を暗示する。作者のホーホストラーテンは、17世紀オランダ絵画の黄金時代の画家で、レンブラントの弟子です。

ブーシェ”褐色の髪のオダリスク“1745頃 油彩 53.5×64.5 

ブーシェは、ロココの偉大な文化のパトロン、ポンパドゥール夫人のお気に入りで、ロココ全盛期を代表する画家。舞台芸術、セーブル陶磁器のデザインなどにも大活躍した。よく神話を口実に、バラ色の女性の裸体美を華麗・優美に描きだした。

この作品では、ベッドの上で大胆なポーズで横たわる裸体の女性を東方のオダリスクという設定(口実)で描いている。

オダリスクとはオスマン帝国スルタンの愛妾または女奴隷のこと。

この女性のモデルは、一説によるとブーシェの13歳年下の妻ではないかとも言われている。

若い女性の顔はあどけないが、その肉体は対照的に成熟し、ロココの豊かな官能性を表す。構図の中心には、オダリスクの豊満なお尻があり、官能性に満ちている。

演劇と関係が深いブーシェは、空間を装飾的に布で見事に飾る。青い布は、女性の裸体を引き立てている。この贅沢な布こそが、ロココ時代の洗練性。

□ジャン・オノレ・フラゴナール“かんぬき”1777-78年頃油彩74×94

まさにフラゴナールらしい官能性とウィットに満ち、よく見ると実に面白い作品!
部屋にかんぬきを掛けて若い男が女性を誘惑している。女性は抵抗しているが、すぐに陥落する。
なぜなら原罪と官能を象徴するりんごが左のベッドの脇に置かれているから。
画面の左半分を占める乱れたベッドは意味深。先の尖った二つの枕は女性の乳房を表し、右側のベッドの角は女性の膝となっている。つまりこのベッド自身が、足を開いた女性の体となっている。何と官能的な作品だろう。

後の印象派を思わせる軽やかで素早い筆触で知られるフラゴナールだが、ここでは、ドレスやシーツも艶やかな冷たく入念な仕上げで、当時盛んとなってきた新古典主義の大きな影響がみられる。またドラマ性を盛り上げるためにレンブラントのような明暗の対比も用いている。しかし本作にはダイナミックな動きがあり、かつ画面に満ちる官能性は、やはりロココを代表する画家フラゴナールらしいもの。

この作品は、美術愛好家のヴェリ公爵のために描かれた。実はこの作品のペアーの作品は、羊飼い達が降誕したキリストの礼拝に訪れるという宗教画の”羊飼いの礼拝“。神聖な宗教画とこの官能的風俗画という異色の組み合わせだった。

□フランソワ・ジェラール“アモルとプシュケ”1798年油彩186×132

王女プシュケは、愛と美の女神ヴィーナスに対する信仰がおろそかになるほどの美貌の持ち主だった。これに対しヴィーナスは、愛の女神とは思えぬほど、怒り狂った。プシュケを最低の男と結婚させようと企み、息子キューピッドを遣わす。ところがキューピッド自身が恋におちた。

この作品では、プシュケがキューピッドから初めて接吻され、驚き動揺している場面が描かれる。

プシュケが視線を正面に向けているのは、神であるキューピッドの姿が見えないから。彼女の頭上の蝶は、プシュケの象徴。蝶は魂を意味する。(プシュケは魂の意味)

1798年のサロンに出品されたが、評判はひどく悪かった。この作品はあまりに甘美で、裸体描写は、シンプルに抽象化されている。(この点がアングルに影響を及ぼすのだが)これがダヴィッドの新古典主義の英雄的なスタイルに馴染んだ人々に全く理解されなかった。

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