名画解説

ギュスターブ・モロー(1826-1898) のガラテア


三越友の会 2007年オルセー展 東京都美術館講堂での名画講師 有地京子の解説の一部

印象派の全盛時代に、まさに時代に逆行するような神秘的・幻想的な神話画・歴史画・宗教画を描いた。七宝細工のような深い輝きのある装飾的な画風。モローの絵画のヒロインたちは代表作サロメに表されるように男達を狂わせる運命の女達であり、悪女である。このモローの手にかかれば、聖母マリアですら殉教者の多くの血をすって妖しく輝く運命の女となってしまう。また女たちはみな強く挑発的で、男は美しく無力で受動的という非常な性的倒錯性に特徴がある。モローが実際の生活でマゾだったかどうかは謎ですが・・・・。

図モロー“ガラテア” 1880年 油彩に板 85×66 オルセー

この作品を知るためのギリシャ神話の美しい海の精、ガラテアの物語

「50人の美しい海のニンフ達の一人がガラテア。その名は乳色の女という意味で肌は真っ白だった。ガラテアは海の神ポセイドンの息子で一つ目巨人の乱暴者のポリュペーモスに横恋慕された。しかしガラテアにはアキスというシシリアのハンサムな牛飼いの恋人がいた。ポリュペーモスは嫉妬に狂いアキスに岩を投げて殺してしまった。」

海の洞窟でゆったりと座っているガラテアの周りのイソギンチャクや海草などの不思議な海の生き物たちは実は学術書の精密な模写に基づいて描かれた。この作品において悲劇のヒロインのはずのガラテアは、モローらしくポリュペーモスを挑発するかのように美しい白い裸体を見せてくれる。ポリュペーモスは一つ目の巨人だが、この作品では普通の男の額にもう一つの目を持って描かれている。ガラテアの口元には冷たい傲慢な微笑が浮かび、口元が微妙にゆがんでいる。まさにモローお得意の男を狂わせる悪女として描かれる。この作品では凶暴な一つ目巨人のポリュペーモスも挑発的なガラテアに狂った哀れな犠牲者かもしれない。このモローの作品は1880年のサロンで絶賛された。冷たい悪女としての新しいガラテア像。モローらしい装飾的な七宝細工のような海の生き物に彩られた美しい作品。

モロー“ガラテア”拡大図

名画解説

「名画の秘めごと」より ドガの“アプサント”とフォンテーヌブロー派の “ガブリエル・デストレとその妹

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ルーヴル美術館展―17世紀ヨーロッパ絵画―より 

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バルビゾン派の先駆者コロー(1796-1875) 

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